全国学力テストの何が問題か?

文科省が4月に実施した全国学力テストについて、「中学国語『記述式』の正答率25%台、3割近くが無解答の問題も」という記事がありました。90万人の中学3年生が受験し、国語の平均正答率は54.6%だったとのこと。特に記述問題の正答率が低く、「文章全体を理解し、理由や根拠を踏まえて記述することに課題がある」と報じられています。

 

平均点54.6というのは、やや難しいものの、おかしな設定とは言えないでしょう。大問が4つあり、うち3問は「ちらし」「スピーチ」「手紙」で、一般的な国語の読解問題ではありません。唯一の読解問題は物語文(島崎藤村)でしたが、本文が1,300字程度しかなく、4,000~5,000字程度の物語文と格闘している中学受験生からすると、拍子抜けするレベルです

 

記事で指摘された無解答が多かった問題は、物語文の記述問題でした。登場人物の心情ではなく、文章構成の効果を問うもので、多くの中学生は問題の意味が理解できなかったでしょう。入試国語とはまったく別物で、これを使って「学習指導の改善・充実を図る」という文科省の方針には、驚きを禁じえません

 

参加率を見ると、公立中学が99.9%のところ、私立中学は29.3%しかありません。大学受験への最短コースを目指す中高一貫校では、入試国語とはかけ離れたこのテストに、参加する意義を感じないでしょう。公立中学では、少なくとも国語においては、学力低下以前に、指導内容の迷走が深刻です。「中学受験より高校受験」と考える方は、ぜひ全国学力テストを解いてみてください。

「『中学受験はコスパが悪い』は本当か?」をご参照ください。)